個人で細々とNFTアートを発行する場合、売れないことも多いですし、あまり法的なことを気にしないかもしれません。
しかし、ジェネラティブアートのように千枚単位でNFTを発行する場合は、数千万~数億円単位の資金を得ることもできます。
このように大金になると、株式会社が株式を発行して資金調達することに似ているような気がしませんか?
NFTアートを何の規制も無く発行できるか疑問に思いましたので、法律的に問題ないのか調べました。
結論を言うと、個人で1枚づつNFTアートを発行する程度なら、法律的に問題ないように思います。
大きなプロジェクトとしてNFTアートを発行する場合は、違法にならないか慎重に検討した方が良さそうです。
場合によっては、賭博罪になる可能性も。

もくじ
NFTアート発行に関わる規制
NFTアートは、NFTにデジタルアートが紐づいたものです。
NFT(Non-Fungible Token)は非代替性トークンと訳されるように、唯一無二として証明されます
ただ、法令に定義などありませんので、どのように取り扱ってよいのかイマイチわかりません。
NFTに以下のような機能があると、認可や登録が必要になる場合がありますので注意が必要です。
- 決済手段としての機能がある
- 隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みがある
- 保有者に対して事業収益の分配が行われる。
これらの機能によっては以下に該当する可能性がありますので、もう少し詳しく説明したいと思います。
- 暗号資産
- 前払式支払手段
- 為替取引
- 有価証券
- ポイント
暗号資産該当性
NFTアートは、暗号資産に該当しないとするのが一般的です。
理由は、決済手段としての機能を持ってないから。
暗号資産には、「1号暗号資産」と「2号暗号資産」があります。
1号暗号資産には、ビットコインやイーサなどが該当すると思います。
そして、1号暗号資産と相互交換できるのが2号暗号資産です。
NFTアートはイーサなどと交換しますので、2号暗号資産に該当しそうな気がしますが、
金融庁によると、1号暗号資産のような決済手段等の経済的機能を有していないものは、2号暗号資産に該当しないそうです。
2号暗号資産に該当しないものとして、トレーディングカードやゲーム内アイテム等を挙げていて、NFTアートも該当しないと考えられます。
以下は、資金決済法の条文です。
(定義)
出典:資金決済に関する法律
第二条
5 この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第三項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
以下は、パブリックコメントに対する金融庁の考え方です。
物品等の購入に直接利用できない又は法定通貨との交換ができないものであっても、1号仮想通貨と相互に交換できるもので、1号仮想通貨を介することにより決済手段等の経済的機能を有するものについては、1号仮想通貨と同様に決済手段等としての規制が必要と考えられるため、2号仮想通貨として資金決済法上の仮想通貨の範囲に含めて考えられたものです。
出典:パブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方
したがって、例えば、ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等は、1号仮想通貨と相互に交換できる場合であっても、基本的には1号仮想通貨のような決済手段等の経済的機能を有していないと考えられますので、2号仮想通貨には該当しないと考えられます。
前払式支払手段該当性
前払式支払手段は商品券をイメージすれば分かりやすいと思いますが、NFTアートは前払式支払手段に該当しないとするのが一般的です。
理由は、物品購入や役務提供の代価として使用できないからです。
以下は、資金決済法の条文です。
(定義)
出典:資金決済に関する法律
第三条 この章において「前払式支払手段」とは、次に掲げるものをいう。
一 証票、電子機器その他の物(以下この章において「証票等」という。)に記載され、又は電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。以下この項において同じ。)により記録される金額(金額を度その他の単位により換算して表示していると認められる場合の当該単位数を含む。以下この号及び第三項において同じ。)に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される金額に応ずる対価を得て当該金額の記録の加算が行われるものを含む。)であって、その発行する者又は当該発行する者が指定する者(次号において「発行者等」という。)から物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために提示、交付、通知その他の方法により使用することができるもの
二 証票等に記載され、又は電磁的方法により記録される物品又は役務の数量に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される物品又は役務の数量に応ずる対価を得て当該数量の記録の加算が行われるものを含む。)であって、発行者等に対して、提示、交付、通知その他の方法により、当該物品の給付又は当該役務の提供を請求することができるもの
為替取引該当性
NFTアートの取引は、為替取引には該当しないとするのが一般的なようです。
為替取引の定義は法令で定められておらず、以下の判例を参考にしているそうです。
『為替取引を行うこと』とは、顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行することをいう
出典:最決平成13年3月12日刑集55巻2号97頁
NFTアートは価格変動しますし、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みとはいえないからです。
有価証券該当性
NFTアートは、保有者に対して事業収益の分配が行われないことから、一般的には有価証券に該当しません。
有価証券にはいろいろな種類あるのですが、NFTアートが該当しそうなのは集団投資スキーム持分です。
集団投資スキーム持分とは、投資信託をイメージすれば良いと思います。

NFT保有者に報酬として別のトークンが付与される仕組みの場合などは、NFTが有価証券に該当しないか検討する必要がありそうです
ポイント該当性
ポイントは、商品購入や来店などの際に無償で付与されるものですが、法令で規制されていません。
NFTアートはイーサを払い購入することが多いですが、この場合は有償になりますのでポイントに該当しません。
無償の場合はポイントに該当する可能性があります。
その他の法律問題
リビールは賭博罪になる?
プログラムによって生成されたジェネラティブアートなどには、購入後に少し経ってから絵柄が公開されるものもあります。
いわゆるリビールされるNFTです。
リビールされるNFTにレア度があると価値が異なりますので、賭博罪に該当するかが問題になります。
NFTの賭博罪の該当性についていろいろな考え方があるので、明確な答えはないようです。
一時の娯楽に供する物とは、飲食物など価格はわずかですぐ消費できるようなもののことで、これらは賭博罪にあたりません。
金銭は少額でもダメだよ

無料でNFTを発行するフリーミントでリビールする場合は、利益の得喪が無いので、賭博罪にあたらないと思われます。
NFTアートのプレゼントは景品表示法違反?
NFTアート保有者に、NFTをプレゼントする場合などは、景品表示法の「景品類」に該当する可能性があるため注意が必要です。
景品類には上限額があり、くじ等の「懸賞」と、利用者に対してもれなく提供する等の「総付景品」では異なります。
NFTアート保有者全員に対しプレゼントする場合は「総付景品」になると思いますので、最高額は以下になります。
取引価格 | 景品類の最高額 |
---|---|
1,000円未満 | 200円 |
1,000円以上 | 取引価額の10分の2 |
景品類の価格は、市場価格や、類似品の価格等から算定することになると思います。
以下は、景品表示法の条文です。
(定義)
第二条
3 この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。(景品類の制限及び禁止)
出典:不当景品類及び不当表示防止法
第四条 内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。
【まとめ】違法にならないように注意
NFTアート発行に伴う法規制をまとめましたが、まだNFTに関する判例は無いと思いますので、どのように判断されるかわかりません。
そもそも、法律の条文も言語にすぎないので、どのように解釈することもできます。
前例の無い事やグレーな事をすると、Winny事件やコインハイブ事件などのように捕まるリスクがあると思いますので注意が必要です。
NFTアートは、法規制に加えブロックチェーンの知識、絵を描くスキルなども必要で、参入障壁があります。
1人の場合だと学ぶことが多いですが、その分プレイヤーが少ないです。
NFTアートへの挑戦は、チャンスだらけだと思いますので、取り組む価値はあるのではないでしょうか。